講演1:「生きた題材で 数学を楽しもう」
芳沢 光雄(桜美林大学リベラルアーツ学群教授)
講演2:「地球温暖化と自然エネルギー - 環業革命の現在」
山根 一眞(ノンフィクション作家/ 獨協大学特任教授)
日時:2013年7月21日(日)13:30~16:40
場所:日本出版クラブ会館・鳳凰の間(東京都)
受講:無料
主催:一般社団法人 自然科学書協会
後援:文部科学省
自然科学書協会講演会2013
講演会は盛況のうちに終了いたしました。多くの方にご来場いただき、誠にありがとうございました。
芳沢光雄 氏 |
山根一眞 氏 |
開催報告
7月21日(日)、東京都新宿区の出版クラブ会館にて、自然科学書協会講演会2013が、昨年を上回る112名の参集者を得て開催された。開会にあたり、牛来真也前広報委員長が、当協会の活動紹介を交え挨拶した後、講演会がはじまった。
1つめの講演は、桜美林大学リベラルアーツ学郡教授・芳沢光雄氏による「生きた題材で数学を楽しもう」。ほぼ満席状態の会場に驚かれながら講演が始まった。
まず、数学には代数学、解析学、幾何学などさまざまな分野とアプローチの方法があることを説明。まず構造的な発想でアプローチした例題をいくつか解説した。
最初に誕生日当てクイズ。「生まれた日の10倍」に「生まれた月」を加え、その結果を2倍し「生まれた月」を加えた数値から、誕生月日を導き出すことができるというもの。数式は、(y×10+x)×2+x=3x+20yで表され、y(日)はこの計算結果を20で割った数、その余りを3で割った数がx(月)となることを説明。数人の参加者の計算結果から誕生月日を当てるパフォーマンスも披露した。また、「あみだくじ」の「スタートする地点が異なれば、辿り着く先は必ず異なる」性質を利用し、「辿り着く先をどのようにも仕組むことができる」方法を解説した。このほか、変化の発想、図形の発想、統計の発想など、さまざまなアプローチ方法で数学を楽しく学べるよう、例題を通して解説いただいた。
芳沢氏はこれまで、全国の小・中・高校のべ200校以上で出前授業を行っているが、その授業では、こうした身近でゲーム的な例題から、「自分もやってみよう」という数学への興味をうまく引き出していることがよくうかがえる講演だった。
2つめの講演は、ノンフィクション作家で獨協大学特任教授の山根一眞氏。「地球温暖化と自然エネルギー 環業革命の現在」と題し、氏が撮り貯めた映像を、会場のプロジェククターに映写しながらの講演となった。
まず、JAXAが制作した、宇宙から見た地球の美しい映像を映写、地球が宇宙に浮かぶ小さな閉じられた宇宙船であることを参加者全員に再確認させることから始まった。
その後、オクラホマの巨大竜巻被害や、中国の大砂嵐、2004年福井豪雨など、世界のさまざまな気象災害の映像を紹介。実際に世界各地の現場で自身が見聞した情報を補いながら説明することにより、温室効果ガスによる環境への深刻な影響が実感できた。
また現在、世界各国は2100年まで気温上昇を4度に抑えることを目標としているが、4度の上昇でも、地球規模でイネや小麦など身近なものを含む生物種の重大な絶滅が危惧されており、非常に大きな問題であることを説明。人類は、農業革命、産業革命、情報革命と技術革新を続けてきたが、今こそ環境を軸とした新しい「環業革命」が必要であり、このためには、ハイウエイ(高速道路網)、スーパーハイウエイ(情報網)に続く、パワーハイウエイ(エネルギー網)を整備すべきであると説いた。
最後に、温暖化は地球規模の問題なので、自分1人の力ではどうにもならない、と無力感に陥りがちだが、個人のアイデアと行動力が流れを変えることにもな、と自身のエコハウス作りの経緯を紹介。「個人の小さなことでも、やってみてこそわかることがあるし、楽しいエコこそ普及する。皆さんも、ぜひ楽しいエコを心掛けてほしい」と参集者に呼びかけ、講演を結んだ。
(文責:広報委員会)